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被災地の生保、保険金支払先に苦慮 契約者、受取人死亡

◇「請求の気力ない」女性も
 東日本大震災で1万5000人を超す死者・行方不明者が出た宮城県。家族を失うなどした被災者が生活を立て直す際、支えとなり得るのが生命保険金だ。生保各社は迅速な支払いを目指すが、親族関係や被災者の心情は契約者ごとに異なり、事情は複雑だ。被災地で保険金支払いの現場を歩いた。【和田憲二】

 「あっ、これ」。25日午後、石巻市内で最も甚大な津波被害を受けた南浜町にある男性(41)のアパートを訪れた明治安田生命保険の営業職員、関谷朱美さん(42)は、泥の中から去年、保険契約した記念に贈った印鑑入れを見つけ涙ぐんだ。アパートは男性の家族が住んでいた1階部分の壁が突き破られ、柱だけになっていた。

 男性と20代後半の妻、長女(1)の家族3人は全員死亡。死亡保険や学資保険など四つの契約の受取人は男性と妻だった。だが、男性は兄弟がなく両親も他界しており、再婚後に自分や娘にかけた二つの契約の保険金(計1000万円強)は前妻との間の子供が相続することになる。「男性の気持ちを推し量ると、法律で決まっていても納得しがたい。受け取る側も拒否するかもしれない」と関谷さん。震災で契約者と受取人が共に死亡したケースは多く、親族関係が複雑にからむ保険金支払いの難しさが立ちはだかる。

 宮城県内だけで行方不明者はいまだ6000人を超す。帰りを待つ家族は苦しい心情を吐露する。夫(76)が目の前で津波にのまれて行方不明になった女性(72)は、同市の避難所に敷いた毛布の上で「せめて(遺体が)見つかれば」とため息をつく。女性は夫が加入する終身死亡保険の保険証券を持って命からがら逃げたが、「(保険金を)請求する気力なんかない。おらもおじいさんと一緒に逝けばよかった」とつぶやいた。

 家族が無事でも、自宅が損壊するなどして多額の出費を強いられる被災者には、保険料の負担も重くのしかかる。同市門脇地区の会社員、斎藤仁さん(47)は津波で自宅が全壊し「残ったのは住宅ローンだけ」。生保各社は申し出た被災者に保険料払い込みを6カ月間猶予しているが、加入する生保担当者から連絡がなく、制度自体を知らなかった。

 各社には、被災者から保険料払い込みを軽くできないか相談が相次ぎ、「補償額を下げて月々の負担を減らすケースも出ている」(明治安田の小川弘行・石巻西営業所長)。生命保険協会は27日、猶予期間を3カ月延長して9カ月にし、その後10カ月以内の分割払いも認めると発表した。それでも、阪神大震災の時と同様、保険料は免除されない見通しだ。職場も被災し、今後の収入に不安を感じる斎藤さんは「猶予はありがたいが、その後は払えないかも」と力なく笑った。

 生保業界は05年に死亡保険金などの大量の不払い問題が発覚し、強く批判された経緯がある。将来、支払われなかった保険金の存在が明らかになって、過去の不払い問題の再来となるようなことだけは避けなければならない。

 家族や仕事を失った被災者はすでに親戚などを頼って地元を離れ始め、連絡が取れなくなる懸念が出始めている。日本生命保険の松井伸介震災復興局長(仙台支社長)は「契約者の事情をよく知る営業職員がまず動く必要がある」と強調する。

 ◇被災者に支払い、総額2000億円規模 「阪神」の4倍超
 生命保険協会によると、東日本大震災の被災者への保険金支払いは14日時点で1593件、128億円。業界全体の支払総額は2000億円規模と、95年の阪神大震災時(483億円)の4倍超に上る見通しだ。

 契約者の安否確認では、14日までに業界全体で計約1万5000人の営業職員・代理店を通じて83万人の安否を確認した。約7万件の電話や約60万通のダイレクトメールでも確認を進めている。

 各社が把握した安否情報を横断的に検索できるデータベースをつくり、支払い迅速化につなげたい考えだ。

 

残された者の苦しみは、想像以上かもしれない。
保険を請求しようという気持ちさえ起こらないのだろう。

しかし、貰えるものをもらっておくのはとても大切だと思う。
これから生きて行くために・・・。

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